沖縄県の医師偏在問題を考える
本県における医師数等の現状、医師偏在指標及び課題
1. 全体像:増加する医師数と、根深い地域格差
沖縄県全体の医師数は増加し目標を達成していますが、その恩恵は全域に行き渡っていません。
特に医師は南部に集中し、北部や離島地域では依然として深刻な医師不足が続いています。
県全体の医師数 (R2)
3,775人
目標 3,646人を達成
県全体では医師は増えていますが、地域ごとの偏在が大きな課題です。
医療圏別:目標医師数の達成状況
2. 地域格差の現実
医師の偏在は、南部医療圏への一極集中という形で顕著に表れています。
一方で、他の4つの医療圏では目標に届かず、多くの「医師少数スポット」を抱えています。
医療圏別 不足医師数 (目標対比)
中部
△ 55人
北部
△ 20人
八重山
△ 16人
宮古
△ 15人
南部
目標達成
主な医師少数スポット
医療圏全体では数が足りていても、これらの地域では局所的に医師が不足し、住民の医療アクセスが困難になっています。
- 📍北部: 安田(国頭村), 塩屋(大宜味村), 伊江, 伊平屋, 伊是名 等
- 📍中部: 津堅
- 📍南部: 久高, 渡嘉敷, 座間味, 粟国, 南大東, 北大東 等
- 📍宮古: 多良間
- 📍八重山: 竹富, 黒島, 小浜, 西表, 波照間, 与那国 等
沖縄県の二次医療圏の医師数(人口10万対)
沖縄県医師確保計画 (令和6年3月)および令和5年衛生統計年報(衛生統計編)概要より作図
3. 特定診療科の危機
地域偏在に加え、特定の診療科、特に未来を担う子どもたちと母親を支える小児科・産科の医師不足は喫緊の課題です。県の全国順位も後退しており、対策が急がれます。
小児科医の不足
目標に対し 44 人不足
全国順位は37位から44位へ後退。中部・宮古・八重山は「相対的医師少数区域」です。
産科医の不足
目標に対し 7 人不足
南部を除く全医療圏で目標未達成。中部では医師数が減少しています。
基幹診療科の状況 (人口10万人対医師数)
内科・外科といった基幹的な診療科においても、沖縄県は全国平均を下回っています。
4. 医師の高齢化と若手の確保
医師の高齢化が進む一方で、未来の医療を担う若手医師の確保と県内定着が大きな課題となっています。
研修医は集まるものの、専門研修を経て県内に残る医師は半数以下です。
年齢構成の変化 (H22 vs R2)
49歳以下の若手・中堅層の割合が減少し、65歳以上の医師が大幅に増加。世代交代が課題です。
若手医師の定着率
県内で専門研修を終えた医師のうち
約40%
しか県内に定着していないのが現状です。
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魅力ある研修と勤務環境の構築が急務